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イチゴ農家の毎日

イチゴ農家になるまで、どんな毎日を過ごすのか良く分かっていませんでした。市役所やJAが開催するような体験会では、具体的な事は良く分かりませんでした。質問するとしても、何を質問すればいいか分からない感じでした。そこで、イチゴ農家の毎日を書いてみようと思いました。すっごく長いので、根気よく、必ず最後まで見てください。お願いします。

 

イチゴ農家の1年間

まず、大まかな説明です。イチゴ農家の1年間は、収穫がある時と無い時に大別されます。収穫がある時は収入があります。収穫が無い時は収入がありません。収入が無い時がある事はとても重要な問題です。安定して生活して行く事が出来ません。そもそも、天候に左右されたりして安定していないので死活問題です。でも、収入が無い時がある事や収入が安定しないという、これらの事実は教えてもらえませんでした。

 

イチゴ農家の収入がある時はいつからいつまで?

イチゴ農家の収入がある時期は、さわこ苺農園がある島根県安来市を例にみると11月から6月末くらいです。7月から10月末までの4か月は無収入です。 ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

ちなみに、生産地と生産方法、栽培するイチゴの品種で収入がある時期は変化します。

生産地が九州だと、島根県より早く暑くなるのでイチゴの収穫も5月頃までで終わります。生産地が関東でも、島根県とはほとんど変わらず、頑張っても6月末頃までです。

生産方法は2つあって、1つはさわこ苺農園と同じ土耕栽培です。もう1つは高設栽培です。土耕栽培と高設栽培の違いは根圏が限られるかどうか、栄養は何かという事になります。根圏が限られず栄養が豊富な土耕栽培の方が、イチゴが大きくなり実が沢山付きます。土耕栽培の方が早いうちから沢山イチゴがとれます。一方、高設栽培では果実の温度が上がりにくいので、6月末まで品質を保ちやすいです。

イチゴの品種は沢山あります。埼玉県のあまりん(リンク)や福岡県のあまおう(リンク)、さわこ苺農園で作っているかおり野(リンク)などがあります。かおり野は早生です。11月上旬には収穫が始まります。あまりんやあまおうは晩生です。12月頃から収穫が始まります。収穫が1か月ずれます。晩生の場合、無収入が1か月増える計算になります。 ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

イチゴ農家の1月

1月は収入がある時期になります。年末12月31日から1月3日まで市場がお休みです。年末の天気にもよりますが、初出荷の1月4日は収穫と出荷に追われる事があります。

1月4日の時間割

6:00 起床

8:00 収穫開始・イチゴ調整・(昼休み無し)

18:30 イチゴ出荷

19:00 帰宅

 

イチゴ農家の2月

2月は収入がある時期になります。

2月1日の時間割

6:00 起床・自宅雪かき

8:00 ハウス雪かき・収穫開始・水やり

12:50 昼ご飯

13:30 イチゴ調整・雪かき・イチゴ出荷

18:30 帰宅

 

イチゴ農家の3月

3月は収入がある時期になります。卒業式があると、とても大変です。

3月14日の時間割

5:30 起床

6:30 収穫開始・イチゴ調整・水作成・水やり

12:20 昼ご飯

13:30 イチゴ調整・摘花・下葉欠き・イチゴ出荷

19:00 帰宅

 

イチゴ農家の4月

4月は収入がある時期になります。入学式があると、とても大変です。

4月16日の時間割

4:30 起床

5:00 収穫開始・イチゴ調整・スパイデックス(天敵)散布・水やり・(昼休み無し)・イチゴ出荷

19:30 帰宅

 

イチゴ農家の5月

5月は収入がある時期です。GWは人手が集まりにくくて大変です。

5月12日の時間割

4:30 起床

5:00 収穫開始・イチゴ調整・(昼休み無し)・川ざらい・水やり・イチゴ出荷

19:30 帰宅

 

イチゴ農家の6月

6月は収入が無くなる危険のある時期です。大雨が降ると収穫が終了します。

6月10日の時間割

5:00 起床

6:00 育苗ランナー受け・収穫開始・イチゴ調整・水やり

12:00 昼ご飯

13:00 イチゴ調整・水作成・土作成・イチゴ出荷・水やり

19:30 帰宅

 

イチゴ農家の7月

7月は収入がありません  チーン…_(8o」∠)_

雨が降ると、土耕栽培だとこうなります。

 

7月9日の時間割

5:00 起床

6:00 ランナー受け・土作り・大雨・エンジンポンプ作動

12:00 お昼ご飯

13:00 エンジンポンプ停止・あきらめる

13:30 失意

16:00 川見回り・エンジンポンプ作動

16:30 休憩

17:30 見回り・ガソリン追加

18:00 休憩

19:00 見回り・ガソリン追加

19:30 休憩

20:00 エンジンポンプ停止・あきらめる

20:30 帰宅

 

翌7月10日の時間割

6:30 起床

7:30 エンジンポンプ作動

8:30 休憩

9:30 ポンプ点検

10:00 休憩

10:30 ポンプ点検

11:00 休憩

11:30 ポンプ点検・別のポンプ追加で作動

12:00 休憩

13:30 ポンプ点検

14:00 休憩

15:30 ポンプ点検

16:00 休憩

16:30 ポンプ点検・水作成

17:30 休憩

19:00 エンジンポンプ作動

19:30 休憩

21:00 ガソリン補充

21:30 帰宅

 

翌7月11日の時間割

5:00 起床

5:30 ポンプガソリン補充・点検

6:00 休憩

7:30 ポンプ点検

8:00 休憩

9:30 ポンプ点検

10:00 休憩

13:00 ポンプ点検・水やり

14:30 休憩

16:00 ポンプ・川見回り

18:00 帰宅

 

イチゴ農家の8月

8月は収入がありません  ( ;`・~・) ぐぬぬ…

お盆とか、高潮とか、台風とか、夏休みとか、関係なしに定植の準備が始まります。

8月22日の時間割

5:00 起床

5:30 除草作業

6:30 休憩

7:30 太陽熱ビニル取り去り・水やり・子苗下葉欠き

10:30 休憩

15:00 出動・・・ しかし暑すぎたため終了

15:00 休憩

16:40 水やり・水作成

19:30 帰宅

 

イチゴ農家の9月

9月も収入がありません  ∑(゚ω゚; )カ¨ーン

9月4日の時間割

5:30 起床

6:00 子苗定植準備・定植・水やり・トラクター耕運・畝立て目印作成・子苗下葉欠き

11:30 休憩

14:30 子苗下葉欠き続き・パタパタ畝立て・水やり・水作成

20:00 帰宅(暗)

 

イチゴ農家の10月

10月は収入が少しあります  ルン♪ o(≧▽≦)o ルン♪

10月25日の時間割

6:00 起床

8:00 水やり・イチゴ収穫・イチゴ調整・ハウス砂撒き・内張裾上げ

12:00 休憩

13:30 イチゴ出荷・ハウス消毒

19:00 帰宅

 

イチゴ農家の11月

11月はイチゴの収穫が本格化してきます。イチゴも出始めで、市場の値段もしっかりしていてとても助かります  (*´∀`*)ホッ-3

11月20日の時間割

6:00 起床

7:30 内張解放・サイド換気調整・イチゴ収穫・イチゴ調整・5棟目客土・イチゴ出荷

13:00 休憩

14:00 イチゴ調整・水やり・イチゴ出荷・内張とじ込み・サイド換気締め・えひめAI作成

18:30 帰宅

 

イチゴ農家の12月

12月はクリスマスケーキ需要でイチゴの需要が高まります。ケーキ屋さんと取引のあるイチゴ農家は戦々恐々です。畑にイチゴがないと、知り合いのイチゴ農家さんを廻ってイチゴを集めます。クリスマスがひと段落ついても、また年末年始がやって来ます。年末は30日まで・年始は4日からしか市場が開いていません。収穫量の調整をするので大変です。

12月29日の時間割

6:00 起床

7:00 換気調整・イチゴ収穫

12:00 お昼ご飯

13:00 イチゴ調整・イチゴ出荷

20:30 帰宅

 

イチゴ農家の年間労働時間

会社に通うサラリーマンをしている時は、土曜日・日曜日お休みです。残業したら、残業代がもらえます。イチゴ農家には土曜日と日曜日がありません。朝早くから仕事をしても、夜遅くに働いても残業代も早朝手当もありません。イチゴは生きています。ビニールハウスの中は自然とは切り離されている側面があります。水やりをしないと、イチゴが枯れてしまいます。ハウスサイドの換気を調整しないと、冬でもハウス内が40℃になります。そうすると、イチゴが枯れてしまいます。さわこ苺農園のように補助金を貰えない場合、全ての作業は自分たちで行います。そのために時間がかかります。時間をかけない場合、お金がかかります。補助金を貰える場合、工事が100%完結しています。3,000万円の工事も自己負担は1,000万円の事があります。完璧に仕上がった借り物の状況ですが、雑用がない分、自分の時間を割く必要が無くて楽です。

そこで、ちょっとやばい、ホントの数字を公開します。就職氷河期世代新規就農促進事業交付要領に基づいて報告した農業従事日数を示していきます。

経営開始1年目9月~12月

4か月間の農業従事日数(1日8時間として換算)

130日

経営開始1年目1月~6月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

212日

経営開始2年目7月~12月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

184日

経営開始2年目1月~6月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

173日

経営開始3年目7月~12月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

176日

経営開始3年目1月~6月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

205日

経営開始4年目7月~12月

半年間の農業従事日数(1日8時間として換算)

170日

土耕栽培で補助金を申請していないさわこ苺農園の年間の労働時間

1日の労働時間を8時間とした場合、365日以上

イチゴを作りながら生活することの意義

資本主義ではない、美味しいイチゴがつくりたい。上手にイチゴがつくりたい。でも、イチゴの専門家として、生計をたてたい。頑張って、美味しいイチゴが出来た時の幸せな気持ちが、皆に広がってほしい。伝統的な土耕栽培でイチゴを作る。自然の中に人間が生きている。自然の恵みで人間が生きていける。人間は食べ物を食べて生きている。生きる事は資本主義とは違う所にあると思う。でも、子供が4人いる。食べさせないといけない。洋服を買ってあげないといけない。靴がすぐにボロボロになっちゃう。進学する時に制服が沢山必要。お金は必要。

イチゴを作りながら生活することの意義は、人間は小さな存在で地球上の小さな小さな生物の1つ。霊長類などと、驕り高ぶる事の無意味。洋服を着なければいけない弱さ。自分って、たいしたことないなって、思う、思える事。謙虚になれる事がイチゴを作りながら生活することの意義かも知れない。2025年6月現在、令和の米騒動でお米が食べられない。食べるという事は生きるという事。お金に変えるべきではない”命”がお金に変えられている気がする。